Wantedlyきっかけにダウンラウンドについての考察

9月に上場するWantedlyが、前回の資金調達時よりも会社の評価額が下がって上場、資金調達するため注目が集まっている。(ダウンラウンドという)
評価額が下がって資金調達するため結果的に高値掴みしたこととなる投資家はおもしろくない。

想定価格880円で評価額は低いが、Wantedlyの場合は公募株式数、売出株式数をわざと、できるだけ小さく抑えているため、ほぼ間違いなく初値は想定価格880円よりもかなり高くなるはずであり高値掴みした既存株主は上場時にはそこまで損失は出ないと思われる。

公募、売出、オーバーアロットメントを合わせてもたった149500株で吸収金額1.3億円と極めて小さい。

 

そもそも未上場株への投資というのは、リスクが高く上場に至る確率自体が相当低くて、うまくいったときに大きく回収するというビジネスなので投資が回収できないことは珍しくないのだけれども、未上場株への投資で、こういった高値掴みのケースはこれからもっと増加するのでは?と私は考えている。ベンチャー投資のパフォーマンスがこれからもっと低くなると思っている。つまりベンチャー投資というのはありふれた投資手法になってしまい、ごく一部の投資家のみが優れた成績を残せるような状況になりつつあると思っているということである。
その理由を順に説明していく。

 

未上場株への投資はいま高値掴みになりやすい状況が存在

夢のようで現実のサクセスストーリー

まずは現状からみていく。次の表1は上場株式の世界の時価総額ランキングである。時価総額は企業の価値を表すものである。

表1.世界の上場企業の時価総額ランキング
色付きはテクノロジー関連の企業

なんと10社のうち7社がテクノロジー関連の会社である。10年前のランキングではテクノロジー関連の会社は10社のうちマイクロソフトのみであった。他は石油などの資源株や製造業(GE)通信株などさまざまなジャンルの企業がランクインしていたが10年でその状況は一変した。ちなみに日本で時価総額1位はトヨタ自動車の20兆円でアップルはその4.5倍である。

もちろん企業価値が高く評価されているのはそれだけ稼いでいるからであり、ドットコムバブルとは全く異なる。

ソフトバンクの孫正義氏は、7位ランクインのアリババに2000年に出資し今では10兆円の含み益がある。また過去にはYahooでも大きな利益をあげている。

一発当てればでかいこういった状況と実際にそれを手に入れた人物の存在は、間違いなく投資家を惹きつけて財布のヒモを緩めている。また、企業の成長性や将来の企業価値を評価するのは難しいが、一部の成功事例は、評価の際に多少なりともバイアスを生じさせているだろう。

 

ベンチャー投資成功事例に惹きつけられる投資家の急増

過去の成功事例をみてベンチャー投資をする主体はどんどん増えていっている。

企業でいうとヤフーをはじめサイバーエージェント、グリーそして上場して数年しか立っていないコロプラ、Voyageなどキャッシュを持っている会社は積極的にベンチャー投資をしている。

これの状況は投資によるシナジー効果が薄い個人の投資家にも広がっている。今ではエンジェル投資家の範囲がお笑い芸人サッカー選手までにも広がり、ベンチャー投資をしている。お笑い芸人で言えば田村淳氏がプログラミング学習のProgateやネットショップ開業支援のBASEに出資しているというし、サッカー選手で言えば本田圭佑氏がMakuakeに出資している。Makuakeはサイバーエージェントの子会社でアニメ映画の「この世界の片隅に」の資金調達を支援したクラウドファンディングの会社である。

もうこのベンチャー投資をする参加者は増えまくっている状態なのかなあと感じる。過去の成功事例に加えて、現在の需要が高まった状況は価格が上昇しやすいし、一部の投資家は高値掴みになりやすい状況であるといえる。

評価額上昇の過程

一般的なモデル

上場を果たす企業の価値の推移をイメージしたものが図1である。

図1.企業価値の推移の一般的なモデル

一般的なモデルでいえば上場直前のラウンドで急激に評価額が高くなる。これは上場という資金回収のための出口がもうすぐ近くまでみえていて、投資リスクが低くなっているためである。これを上場時又はしばらく保有して投資額よりさらに高値で売却して儲けるという手法である。

ちなみにダウンラウンド(図2)はこんな感じ。

図2.ダウンラウンドの例 評価額が下がっている

変化しつつある評価額上昇の過程

先ほども述べた通り、テクノロジー関連株の躍進やそれへの投資成功事例の存在、そして目に見えてわかる参加者の増加により、ベンチャー投資は高値掴みになりやすい状況が存在している。それに起因して従来の一般的なモデルから下の図3のようなモデルに変化しつつある又は変化をとげていくのでは、と私は予想している。

図3.企業価値が上昇しているイメージ図

今までの青色からオレンジ色へ評価額が変化し、こうやって高値掴みをしてしまうケースが増えれば、ベンチャー投資のリターンがこれから低くなるのは当然である。ベンチャー投資というのは、もうありふれた投資手法なのかなあと思っている。

今後これがだんだんと創業してすぐの段階のシードラウンドなどにも影響していくのでは、とも考えている。

最後に

未来を予想する時に参考にするのは過去の事例であり、それはたいていの場合役立つ。ただ、投資のおいては注意が必要である。なぜなら過去の事例が、価格に影響を及ぼすからである。
安全と思える投資と危険と思える投資は価格が違う。
高値掴みになりやすい状況では注意が必要といえる。

一般的に投信が売れるのは、上昇した「あと」。
過去を見て安心できる状況であるとき、投資というものにおいてその「安心」は高くつくことがよくあるのでご注意を。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です